「大原の農家の娘お濃は隣村へ嫁いだ。ある日、遅く帰った夫が寝支度をして
部屋へ入ってみると、熟睡しているお濃の体は大蛇、髪は逆立ち、肌も鱗で
覆われていた。夫は恐ろしい姿に驚き、お濃を家から追い出してしまった。
お濃が戻ってきた実家では憤慨したが、夜になり父母がお濃の部屋を覗いて
見たら、まぎれもなく頭髪は逆立ち鱗が生えた大蛇となっていた。
実家からも追われ天涯孤独になったお濃は、不幸を嘆きつつ野原を彷徨い、
そして絶望の中、駒ヶ岳の麓の池にたどり着いた。青く澄みきった池を見つ
めていたお濃は、やがて柳の枝で作った杖を岸に突刺し水中に身を投じた。
お濃が岸に刺した杖は根付いて大きな柳の木になり、その下に立つと、池の
中から機を織る音が聞こえてくる時があり、その時は必ず大雨が降った。」
濃ヶ池、真ん中に見えるピークは宝剣岳